毛鉤研究会

東京トラウトカントリー(TTC)で月1回開催している毛鉤研究会に初参加。
朝7時に到着すると(宮崎先生の毛鉤も見たかったのだが)、挨拶もそこそこにメインストリームに降り淵に向けて吉田毛鉤のBHを流す。
ほれほれほれ。
すかさず、2匹あがってホッと一息。3匹目も、といきたいとこだが、あまり時間もない。
管理棟の2階、座敷間に上がると、いきなり鹿マスクした人(TTさん)がどっかと腰を下ろしていた。しばらくすると熊の着ぐるみ着た人(ペタウロさん)もウィーすって慣れた感じで入ってきた。
なんだなんだ? この空間はコスプレしばり?
これで次にオークマスクやらデスマスクやら着けた首領が奥から出てきてカルトっぽくなったら真っ先に退散するとこだが、いえいえそんなはずもなく、和気藹々とした雰囲気の中、吉田先生の講義スタート。
今回初参加なのはワシ一人。あとは全員常連さんで、先生の話を聞きながらも各々自分のバイスセットを机上に出し毛鉤を巻いていく。
ということはワシも自分のセットを出さねばならんのだが、まぁこれがけっこう恥ずかしい。
今回のためにバイスセットケースを自作してるのだが、実際ワシが机上に出したのは木製の蓋の裏側にバイスの土台を埋め込んだ蓋部分のみで肝心のケース部分(下半分)がない。じつはケース部分はまだまだ彫り彫り作業中で蝶番すらつけてないのだ。
蝶番のついてないままケースと蓋を重ねるのはさすがに危ないので、机上に出てるのは蓋部分のみ。

うーん我ながら実にビミョー…
てかヘンだろ、これは。明らかに。
パッと見
ーまな板にバイス

これはアリなのか? これ見てヘンだと思わないほうがおかしい。
初見した人は、アイツなんでわざわざバイスに木板つけてんだろ? とか思うに違いない。
てか思われとる。

蓋から土台を外したい。外してしまいたい。
でも外れない、いや全然外れなかったのだ、昨晩。もう木にグリグリにめり込んでますから。
なんでこんな作りにしちゃったのだろう…

この場の微妙な沈黙がイヤ。とくじろうとバイス、さらされる…
頼む。誰かツッコみ入れてくれ…

「それ…木?」察したか、先生がジャブを打ってくる。
赤面のとくじろう。
優しき紳士なUさんは「い、いろあいはいいんじゃないのかな」と慌ててフォロー入れて下さるが、そもそもフォローになってない!
これはワシのセンスではないんです! まだ未完成なのです!

新学年の新学期初日にまさかの日の丸弁当持参しちゃったみたいなそんなアウェイ感。
嗚呼…次作る時はせめて蓋から土台を外せるようにしとこう。

さてさて。
毛鉤学のほうの講義もガンガン進んでいく。
ハリ軸の太さ。形状(ふところの幅、針先の向き)。ハリ先までの長さ。
それに伴うかかり易さ、バレにくさ、耐久性の変化。ハリ先の傷つけにくさ。
ヒネリの有無。

今のワシはBHメインなので中底層を狙う感じになるのだが、その場合ふところの狭い、つまりかかり易さよりバレにくさ重視のものが良いとのこと。
もひとつ。水中の場合、表層のようにビシッと合わせるのではなく、むしろストロークで大きく合わせるのがコツだとのこと。
この辺りはメモに残しておかないといけない。

休憩の後、ぜんまいをコーヒーミルでひく。すげ! あっという間にフワッとなった。これをマテリアルにして毛鉤を巻くらしい。
続いてアイレスフックへのアイの取り付け。
ー毛鉤を巻くときは左手でバイスを握り、右手の指先はボビンを持たず糸を持つようにー
ワイヤー入り毛鉤の作成。
ー巻いたワイヤーの両端を上から見てクロスするように糸で締めワイヤーがずれないようにー
逆さ毛鉤の作成。
ー最初にテーパーをつけながらヘッドを作成ー
ビーズヘッド入りの逆さ毛鉤もアリだそうだ。K隊長はハックルよりもビーズヘッドのほうが鉤先側にとりつけられた「掟破りの逆毛鉤」も作られたそうだ。
ハックル、ボディ用素材のほうもコック、ヘン、サドル、ネック、ダビング材…
深すぎる…

毛鉤学、あるいは毛鉤道…
そんな講義が11時くらいまで続いた後、作った毛鉤を持って実釣に出る。

吉田毛鉤会「見習」状態を脱出したいので、ノルマの100匹目指してなんとか釣果を稼ぎたいのだが、今日はね、もうわかりきってるのだ。チャンスは間違いなく早朝だけだったはず。

今年最後の研究会。そろいも揃った吉田毛鉤会精鋭メンバー。
そんなけばれる猛者連中が日原川に向かって一日中同時にゾーンプレスをかけるんである。
昼食までの間、ずっと毛鉤を流したのだが、朝と異なり、ついぞ魚が出ることはなかった。

からふるお姐さんやTTさん、TERUZOチームの方と食事をしながら考える。
さてさて午後からどうしたものだろう。
そういえばこのワシ随分とTTCに通ってるがまだメインストリーム以外の場所に行ったことがない。
この際新しいポイントでも開拓してみよう。
TTCスタッフのEさんに相談すると下流のリッチゾーンに2ヵ所程有名なポイントがあるらしい。
ー釣れるかどうかは腕次第だが、魚がいるのは間違いないー
とのことなので、日原川にかかる橋を渡り、橋の右脇の階段を降り対岸に出る。
平たい石の上に腰掛け…
Eさんに教えられた通りにやってみる。
この淵は流れが逆回転で巻いて魚がたまりやすいらしい。
確かに魚はいるけどな。今日はどいつもこいつも皆スレきっとるんですよ…
ぶつぶつ呟きながら淵の周りをレベルラインで5回転ほど流したが、魚が食いつく気配がない。

もういいや、と淵を諦めラインを手前の瀬の流れの中に入れる。毛鉤とラインは勢い良く沈んで下流に流れていく。
流れの先には大岩。大岩の底の部分にピンクのBHが届いたか途端、メインストリームでは見たこともない巨大な虹鱒の影が動く。
「でかっ!」
ヘタレとくじろう、声出して叫ぶと同時に竿引っ込める。
虹鱒も感づいたか、反転して大岩の底にある隠れ家に戻る。
あいつがここら辺を仕切っとる班長だな…

にしてもデカい。うーん、勝負するか否か…
竿折れるかもしれんなぁ…どうすっかなぁ…
10分程悩んだあげく、結局勝負を決心。

虹鱒が引っ込んだ時点で勝負は終わっとるのかもしれんが、そんな魚側の都合は一切無視して、それから30分間、とくじろうひたすら虹鱒の隠れ家にむけて毛鉤を流す。

…が出ない。出るはずもない。

もったいない。せっかくの勝負の機会をみすみす逸してしまった。
やっぱり「テンカラ兄弟」みたいに大胆に勝負できる竿も必要だな。
shit!

ため息つきながら上流のメインストリームを見やると、なんかみんな楽しそうだ。

なんでこんな所にワシ一人…と急に疎外感を感じてきたので、また橋を渡り管理棟のポンド前へと戻る。

日原川を覗くと、やややっ!

サンタクロースとトナカイが獣姦…鬼畜!
なぜに、畜生道堕ち!?
若さ故の過ち!?…
クリスマスのTTC、もうなんでもアリになります。
いっそ来年はコスプレしとる人のみ釣り可みたいな、そんなスペシャルホリデイを期待!

んで隣にいたペタウロさんにレベルラインのキャストのタイミングを教わる。
1で引き、2で溜め、3で前へ、4でプレゼン…
「1234、1234…」
2拍目に溜めのあるテンポの速い4拍子。どの曲が合うんだろ…
The Beatles ーOb-La-Di, Ob-La-Daー
辺りなのかな…

というわけで今日の釣果は早朝の2匹のみ。
残り91匹。