冬季自主トレの1

先月のテンカラ教室&フライ教室の復習をしに東京トラウトカントリーへ。
八王子ICから降りてしばらくすると夜が明け始める。晴れ間はわずか。青梅過ぎて山道に入ったところでポツポツとフロントウィンドウに雨があたる。
この間のフライ教室の時もあいにく雨だったが、全く釣れないというわけでもなかったので、なんとかなるわいね、とお気楽モード。
なにしろ授かった毛鉤会帽子にはくっきり「見習中」の文字が入ってるので、これが外れる条件となる100匹釣るまではガンガンいかないと
。来年の「テンカラファンの集い」までにクリアできてないと、そら恐ろしいことになっちまうぞ。
悪天候は逆に好都合、ポイント攻め放題なのでガッツリと練習できるし、なにより人がいないので恥ずかしくない…なんていろいろ考えながら8時に到着すると、なんとなんと吉田先生が来ていてスタッフEさんとストーブ前で談笑中だった。先生のほうもいろいろ試したいことがあるらしい。この季節、考えることは皆同じか…

恐ろしく寒いので3人ストーブの前で1時間程温まった後、各々の実作業開始。
ワシの今日の目標はズバリ「レベルラインのコントロール精度を上げ、底波から1匹釣る」。
この間のテンカラ教室で底波のポイントを教わったので、今日はなんとかそこに毛鉤を流して鮮やかに釣ってみたい。
それにはまずもう少しレベルラインのコントロールがつくようにならないといかんのだ。

メインストリームに降りると、ビーズヘッドニンフ大先生を準備し、大淵前で岩の陰に隠れウォーミングアップ代わりにキャスト開始。
ひどく冷え込んでるけどまだ魚もスレてないし朝一のここで釣れないわけがない。
楽観モードでアタリを待ったのだが、おかしい、しばらく流しても釣れる気配がない。ウーシ、ウーシとあちこちに毛鉤入れてもいっこうに反応がない。というよりラインが伸びていかない。仕掛け巻きから外す時、しっかり伸ばしてるし問題ないはずなのだけど。
何度やっても飛ばないので、先をよく見る…

アレレ? (ラインの先から)ハリスがなくなってる!
何故? どこかに引っ掛けたわけでもなし、毛鉤とハリスもしっかり結んだし。記憶を遡り原因を探る。
今日は竿を取り出して…
仕掛け巻きからレベルラインを外してリリアンと結んで…
ハリスを切り出してBHニンフと結んで…
結束が弱かったか? でもなくなってるのハリスから先だし。

うーん。それにしてもいつからなくなってたんだろう。
原因不明のままBH大先生を1つロストしてしまったのが痛いけど、まいいか。
気分改めハリスを切り出し、新しい毛鉤を装着。

最後にラインとハリスを結んで準備完了。
…っととととと。

ん? 最後の部分(ラインとハリスを結ぶ)今日やるの初めてだ…よ…な?

まさか…
実釣開始から今までずっとハリスもつけずに釣りしてたんでは…
ハッとしてキャストしてた辺りの地面を見る。
ー ビーズヘッド大先生が落ちてる! ー
大先生を拾いあげるとハリスもしっかりとついてる。

初キャストした時にここに落ちたんだな…
それから30分近く…ワシっていったい…
次第に自分の顔が火照ってくるのがわかる。
顔をあげるのも恥ずかしいので管理棟のほうを横目で確認。

ー頼む無人であってくれー

メインストリームを見渡せる管理棟の前には誰もいないようだった。
あぶね。あせったわー。
TTCではカメラを抱えたスタッフのEさんが、時々決定的瞬間を捕らえようと狙撃体制に入っていることがあるので、恥ずかしい思いをした後は撃たれてしまわぬよう十分注意しないといけない。
あるいは「あの人さっきから何をやってんだろうか…」と呆れて室内に入っていったのかもしれないが…

いずれにしろ、しっかりラインとハリスが結ばれた仕掛けを淵に投げ込むと、すぐに虹鱒が出た。
余裕綽々で底波のあるゴールデントライアングルの落ち込みへ移動。
そそ。ここで釣らないと意味がないのだ。
この間の授業でレクチャーを受けた底波釣り。急流に見える落ち込みの周囲にも毛鉤が滞留するポイントがあることはわかったのだが、そこから波へと乗せる「スタートボタン」がみつからなかった。
今日はその辺りのことも少し研究したかったので早速毛鉤を打ち込みいろいろとやってみるのだが、イマイチ的を射ない。
そこで先生が様子をみにきたついでに尋ねてみると
「そこはラインの入射角で操作します。ラインへの抵抗が増えるのを利用し…」
とのこと。
入射角! なるほど!
ーテンカラファンの集いーの時に石垣先生も言っていたあれか! 竿先を低くするとラインへの抵抗が増えて毛鉤が沈んでいくという…
自分の頭の中で記憶がリンクした。
「それも大事ですが、今日はそんなことより瀬を練習しましょう」
先生そう言うなりさっきスタッフのEさんがバケツ1杯の虹鱒を放流したばかりの淵を指差した。淵からわりと多めの水が流れ込む深さ30cmくらいの浅い瀬である。当然魚影は濃い(というよりワシの練習のためにわざわざ放流してくれたのだ。感謝感謝)。
来春に管釣の外の実際の渓流で釣りをする為の「明日のために〜その×〜」を今ここで実施するのである。
じつはワシ、瀬の釣りが苦手である。理由は簡単、ビーズヘッドで浅いところを流すと根がかりしやすいから。
今までどれだけのリリーフ陣が天に召されたことだろう。
先生もその辺りのことは察したのか、ビーズヘッドの変わりに浮かず沈まずの毛鉤に差し替えてくれ、自らお手本にと1匹釣り上げると
「今日はこんな感じで釣ってください。じゃ」
と言い残し管理棟へとあがっていった。
気がつけば雨も降り出している。冷え込みも相当厳しい。

ワシの命綱のビーズヘッドなしに果たして釣れるもんかな…
これからトライしようという水面を見直すと、気のせいかさっきより魚影が少なくなってる気がする。

ー放流したばかりの魚は体力がないから、これぐらいの流れの瀬でもすぐに流されてしまうんですよー

先生がお手本を釣り上げる時に言っていたのを思い出す。

こりゃ早く釣らないと、しんどくなるぞ…

とくじろう、少しでも放流魚が残っているうちにと、ひたすらキャストを繰り返す。
放流したばかりの魚に見境なくのべつ幕無しに毛鉤を投げつけるとくじろう。

ゲスい…

15分程流し続けたがアタリなし。

天罰だろうか。雨がみぞれに変わる。
手と頬が凍りつきそうだ。
一度避難したい。管理棟のほうをそっと覗くと先生がまだワシを見ていた。

ーだめだ。一匹上げるまでは戻れんぞ−

震えながら釣る。
みぞれがさらに雹になる。
雹が水面に当たってバチバチ音がする。
イタイイタイイタイタタタ…
ワシの顔も手もドンパッチ化した雹にやられてひどいことになってる。

ー先生、手、手が、手が寒すぎて動きません。
 うっすらと感じてはいますが、もしかしてこれは拷問なんじゃないでしょうか?ー

管理棟にいる先生に聞こえるはずもなく、雹が降る中、がむしゃらに竿を出すとくじろう
我ながらもうクレイジー。笑うしかない。

頼む、頼んます。一匹でいいから出てくだされ。
ワシを許してくだされ。
祈るような気持ちで流し続けると、なんとか針がかりしようやく1匹釣り上げることができたので、管理棟で眺めている先生にOKサインを送った後、メイフライへと退散し、そのまま昼食となる。

いやぁ厳しい、厳しい。
午前中の釣果結局2匹だけだったぞ。
スタッフEさんに確認したところ、それでもルアー釣り陣は釣れてるとのこと。
ふむふむそんなもんなのか…
アピールの高いルアーのような毛鉤はないもんかと吉田先生に相談すると、んだらばこれを、とゴッツイ毛鉤を頂く。
先生これなんですかと尋ねると、これぞウーリーバガーと呼ばれる毛鉤だと先生(他にタングステンヘッドの毛鉤も頂く)。

午後はこいつも試していこう。

秋山郷のUさんも来られたので3人で餌竿の話やらしながら2時間程過ごす。
その間に天気も回復し、晴れ間さえ見られるようになった。

14時を過ぎたところで午後の実釣再開。

もう少し釣果をあげたいのでまずはウーリーバガー
魚の動きを追うため淵の上に座って投げ込む。この毛鉤めちゃくちゃ重く、毛鉤というよりほんとルアーに近い。
力入れたら入れた分だけ凄い勢いですっとんでく感じで、ある種違和感すら感じる程だ。
先月の教室でラインがやたら勢いよくすっ飛んでく生徒さんがいてどうにも腑に落ちなかったのだけど、きっとあの人の投げた毛鉤もウーリーバガーだったんだろう。

水面に着目すると、毛鉤が入るや否や4、5匹が我先にと群がり、つられて竿先をあげると中の1匹が釣れた。
リリース後もう1度投げるとまたまた釣れる。

なんと大味な…
と思いながらも3投目をキャストするとそれ以降は全ての虹鱒が反応しなくなる。

これは先生の最近のブログで読んだ覚えがある。
アピール力がありすぎて魚が急速にスレたのだ。

頭を切り替える。
毛鉤をパラシュートに替え、メインストリーム最下流の瀬脇を狙う。
1匹。
さらにもう1匹。
釣果あった。時合もよくなったのだろう。
これならば午前中苦戦した瀬もいけるかと移動し再トライ。
午前中は放流直後だったし天候もひどかったので、ここでもう1回釣り上げ、ビーズヘッド以外でもいける、という確信を得たい。
瀬の水面を確認すると1匹定位している魚も見える。
あいつの口元を狙おう。
定位場所の上流から何回か流す。
なかなか思うように流れないが、20回目くらいだろうか。魚の目の前に毛鉤が流れると虹鱒が反応し、遂に釣り上げることができた。

先生もメインストリームへ祝福に降りてくる。これは嬉しい。
とくじろう、どんなもんです、と調子に乗っていると、んで次ですが、と新しい「明日のために」が発動。段平先生容赦なし。
ー棚を釣りあがれー
渓流の棚のような所を釣りあがる場合、水面より低い所に自分の体があるので目線が水面と同じくらいの高さになってしまい、水中の様子が見えない。
そこをいろいろと工夫して狙う練習である。
先生が見本を見せる。
「ターゲットの斜め下流。その位置から左瀬の脇腹をえぐりこむようにして
 打つべし! 打つべし! 打つべし!」



特訓は続く。
ということで本日の釣果は7匹。

地球滅亡(回避)まであと93匹。